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日記形式でつづる いがぴょんコラム ウェブページです。
私のバイオリン Rina#1を製作してくださった荒木バイオリン工房を訪ね、いろいろと話をしてきました。その流れで、工房の通常の製作スタイルによるバイオリンと、私のバイオリンとを弾き比べることになりました。
弾き比べてあらためて分かったのは、私のバイオリンが奏者の耳に優しい、ということです。というか、自分の音が聞こえづらい……。それ以外にもオーダーメイドの際の工夫点は多数あるのですが、それはここでは割愛します。
このバイオリンは、奏者の耳や首に優しい楽器にしてほしいと注文し、ブロックの大きさや板厚分布などを調整して製作してもらいました。爆音を捻り出しても、奏者である私の耳元では、音が過度に大きく聞こえません。狙い通りの性質です。長い時間演奏しても耳が痛くなりにくく、頭痛もしません。
耳のすぐそばで大きな音を繰り返し、長時間聞き続けることは、奏者にとって負担になります。耳鳴りや聴力低下につながるおそれがありますし、私の場合は頭痛にもつながります。特に、専門的に長時間バイオリンを演奏する人にとっては、重要な要素だと私は思っています。長く演奏を続けることを考えると、奏者の耳に優しいことは、私にとって重要な設計条件です。
一方、奏者の耳に音が届きにくいバイオリンは、一般には売れにくいのだと思われます。楽器店などで試奏した奏者が、その場で「よく鳴る」と感じにくいからです。私の体験として、そういう耳に優しい系かつ明るい音色の既製品のバイオリンとなるとほとんど目にしたことがありません。
しかし、奏者の耳元で大きく聞こえることと、音が外へ行くことは同じではありません。そして購入した楽器を長く弾き続ける立場では、耳元で大きく鳴り続けることが、かえって負担になります。試奏で分かりやすく評価される性質と、私が長く演奏を続けるために必要な性質とは、必ずしも一致しないのです。
だからこそ、このバイオリンには、オーダーメイドで製作してもらう必要性があったのだと思います。
このバイオリンは、時間の経過による、いわゆるエイジングも見込み、最短で実用に耐える状態になるまでを4年ほどと見込み、その先、狙った鳴りに近づく目安を製作から6〜8年後として設計してもらいました。最初の2〜3年は、全然音が鳴らないというか、音が外へ行かない感じがありました。客観的に考えて、あれはひどかったです(苦笑)。
そして製作から6年が経ち、ようやっと、いい感じに音が外へ行くようになってきました。奏者の耳には優しいまま、それでも外へ音が届く。時間はかかりましたが、注文したときに狙っていたところへ近づいてきたように感じます。これは、私が6年間この楽器を弾き続けてきたなかでの実感です。
完成直後の鳴りやすさで判断されやすい既製品では、このように時間のかかる設計は、なおさら流通させにくいでしょう。一方、オーダーメイドなら、完成直後だけでなく、数年先にどのような音色のバイオリンに育ってほしいのかまで考えられます。そして、その選択に自分で責任を持てることも、オーダーメイドならではなのかもしれません。
もし仮に、次にオーダーメイドで製作をお願いする機会があるなら、もう少し早い段階から鳴りやすく、それでいて奏者の耳には優しい、そんな設計にしたいよね、と職人さんと話しました。
そのなかで出たのが、裏板を一枚板にすれば、板の厚さをあまり下げることなく、もう少し早い段階から楽器が鳴るようにできるかもしれない、という案です。もちろんそれ以外にも要素はいろいろありますけれどね。実際には木材の材料特性や各部の設計も関係するでしょうから、一枚板だけで決まる話ではありません。今のところ、これは次の楽器を考えるための仮説です。
なお、実際にもう一本オーダーメイドでバイオリンを製作してもらうと、今使っているバイオリンが余ってしまうという問題がでてきます。ちょっとした贅沢な悩みでもあります。ただ、このバイオリンは特殊だからなぁ……。
Last modified: $Date: 2026-08-14 $